栄光の旗No.49
ドストエフスキーの作品の中でも、世界文学史上の最高傑作といえるのが、この『カラマーゾフの兄弟』です。生きることとは何か、正義とは何か、悪とは何か、神への信仰とは何か、人間の欲望とは何か…、といった複雑な問題が多岐にわたって描かれ、人間の心の複雑さやおもしろさが、さらにはドストエフスキーの人生そのものが随所に反映されている文学作品です。
物語は、カラマーゾフの一家(父フョードル・長男ドミートリ―・次男イワン・三男アリョーシャ)が次々と紹介される場面から始まります。その後それぞれの考えに従い、なんとか幸せになろうとする強い意志を感じさせながら物語は進んでいきます。今ここで、この長編のすべては語れませんが、第5編「プロとコントラ」やイワンの物語詩「大審問官」の部分が個人的におもしろかったです。
創立者池田先生は『青春対話』の中で、ドストエフスキーが銃殺刑の直前で取りやめになったときのエピソードやイワンの思想を通して語っていらっしゃいます。また、文学に関しても「人間の心の葛藤を表現しようとしているのが、文学なのです」「古今の文学は、人間の『心から心へ』差し伸べられた橋です。どれだけ橋を渡るかで、自分の心の中身が決まっていくのです」と述べられています。
人間の「心」という最も複雑でおもしろいものを探究していくためにも、ともどもに世界文学への挑戦を開始していきたいと思います。ぜひ、ご一読ください。