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栄光の旗No.49

学園生のビブリオバトル

高校生による本紹介
『残像に口紅を』筒井康隆

文字が消えた世界…、恐怖と好奇心が止まらない。想像できますか…!

 私が紹介するのは、筒井康隆作『残像に口紅を』です。この本の世界では、とある大切なものが消えてしまいます。それは、文字です。五十音それに濁音、半濁音合わせて70近くの文字が、時間が経つごとに一つまた一つと消えてしまうのです。消えるというのは、何もその文字が発音できなくなる、書けなくなるというだけではありません。その文字が名前のなかに使われている物や人の存在自体が消えてしまいます。たとえば、「い」という言葉が消えたなら、「犬」という動物自体の存在が世界から消え、更に「もとから犬という動物は存在しなかった」という風に、記憶まで変わってしまうんです。
 さて、ここでこの本の最大の魅力を紹介させてください。それは、この物語の世界で消えた文字は、この本の文章自体にも絶対に出てこないということです。文字が消えるごとに、言葉遣いは次第に乱暴に、シーンの描写は回りくどくなっていきます。決して失われるはずがないと思っていた文字というもの―それが1つずつ消えていくことへの恐怖と、それを上回るドキドキ感、そしてついページをめくってしまう止まらない好奇心があなたの頭をいっぱいにするに違いありません。極限まで文字が消えた世界で生き続ける主人公の結末をぜひ、その目で見届けてください。

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